第6話:寺と農家の学生寮

IMSプログラムの病院見学を終えたゴンドウは、まだ興奮冷めやらぬ顔でレクサスLSの後部座席に乗り込んだ。 助手席には漆部館長が座っている。 運転席には、和装のウルシベに合わせたかのように、黒スーツを着たスタッフが静かにシ […]

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第5話:IMSプログラム

午後の斑鳩塾。 エントランスを進んだ正面の壁に、荘厳なタペストリーのように並ぶ写真とパネルがあった。 ゴンドウは、思わず足を止めた。 目の前に広がるのは、医学部に合格した卒業生たちの“顔”だった。 いや、“顔”というより […]

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第4話:魅了する講義

イカルガ塾、講師控室前。 廊下の壁には、講師一覧が掲示されていた。 ゴンドウは立ち止まり、そのパネルをじっと見つめた。 ──何だこれ。 顔写真と名前、そして出身大学や経歴が、洗練されたデザインで並んでいる。 だが、記載さ […]

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第3話:イカルガシステム

斑鳩の空は、早朝の青を透かしたまま、昼過ぎには白く乾いた光を落としていた。 ゴンドウ龍太郎は、館内用のスリッパに履き替え、イカルガ塾・本館の廊下を漆部館長に案内されていた。 廊下の両側には大小の教室が並び、そのガラス張り […]

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第2話:入塾の懇願

重厚な障子戸の向こうで、わずかな物音がした。 ゴンドウは、畳に正座したまま背筋を伸ばし、微かに響く声に耳を澄ませた。 (……誰か来たのか……?) 襖の隙間から、涼やかな夏の風が吹き込む。 鶯の声が遠くで響き、瓦屋根に当た […]

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第1話:王国の門

午後三時を過ぎたばかりだというのに、斑鳩の空には夏を思わせる入道雲がむくむくと湧き立っていた。 遠くで微かに雷鳴が響き、湿った風が法隆寺の土塀沿いを静かになでていく。 この町には、千四百年前から変わらぬ時間が流れている。 […]

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第10話(終):自分パンチ

JR京浜東北線、西川口駅から歩いて10分ほど。 築40年超えの古びたビジネスホテル。 廊下には、カビ取り剤と芳香剤が混じったような酸っぱい匂いが立ち込め、ベージュ色のカーペットはところどころ黒ずみ、壁紙は剥がれかけていた […]

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第9話:万札ほほ叩き

カンゾウの自習室。 夕方5時を過ぎ、外は群青色に沈みかけている。 夕陽に照らされた自習室で、一人だけ足を組み、イスを斜めに傾けて座る男がいた。 家永功騎(いえながこうき)、22歳。 この春で4浪目を迎える「古参」の浪人生 […]

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第8話:学歴マウント客

カンゾウの塾長室。 島田巧(しまだたくみ)は、いつものラガーシャツ姿で、机に足を投げ出していた。 「……次の冬期講習のパンフ、表紙は俺で行こか。“東大合格請負人 島田巧”が大見出しやな、……ふっ」 自分の肩書きに酔いしれ […]

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第7話:ホットカルピスの刑

カンゾウ──正式名称、関東学力増進機構。 大手予備校ではないが、知る人ぞ知る都内にある大学受験予備校だ。 その一角、女子生徒の水谷歌帆(みずたにかほ)は、夕方の自習室で赤ペン片手に英語長文と格闘していた。 表情は明るく、 […]

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